道具について思うこと

 写真は、今私が使っているサンドウエッジです。ソールに2カ所キズが入っていますが、いずれもクリークに入ったボールを打ったときに出来た物です。草の上にボールがのっているように見えたので、出来る限りクリーンに打ったつもりでしたが、草のすぐ下には石があり、変な音がしたので見たら、キズが入っていました。

 クラブに出来たキズは思い出になります。クラブが単なる道具でしたら、キズが思い出にならないと思います。クラブが単なる道具なのか、それとも「情緒」なのか、人それぞれでいいと思いますが、メジャーでプレーしているイチロー選手は、自分のバットやグローブは、絶対人には触らせないそうです。彼にとっとっては、単なる道具ではないのでしょう。

 道具と身体の関係から考えても、単なる道具ではなく、情緒的な存在として扱った方がよいのかもしれません。前にも紹介したように、人間は箸や、金槌や、野球のバット、ゴルフクラブなど、ある程度使っていると、その道具自体が身体の一部として使うことが出来るようになるそうです。

 野球でホームランを打とうと思ったら、バットの芯か、その近くで打たなければなりませんが、もの凄い速さで飛んでくるボールを、バットの芯を意識しなくても、芯で打てるのは、バットが身体の一部として使えるからなのでしょう。

 身体の一部であるならば、イチロー選手までとはいかなくても、大事に扱った方が、何かいいショットが打てるような気がします。私もクラブを作っている人間として、自分の所で販売したクラブを、長く大事に使ってもらっているのを見ると、ホントに嬉しく感じます。これからも、長く使っていただけるクラブを作っていくつもりです。


技術の本質とエクササイズ

自分が昔やっていたこと

 かなり前のことですが、国立競技場内にアスレチックジムがあり、そこでトレーニングをしていましたが、そこにいたトレーナーの人に身体の鍛え方を相談したところ、そのトレーナーの人がゴルフのスイングを手振りをしながら、この筋肉と、ここの筋肉を鍛えた方が良いですよ、このマシーンをこうやって使いましょうと指導してくれました。
 
 そしてトレーニングを続けると、当然ながら筋肉は肥大してきて、何となく競技能力が向上するような気になりました。やがて体重も増えてきて、LLサイズのシャツも、腕回りなどパンパンになるほど身体を大きくなりました。その頃は、それで満足していたのですが、身体は大きくなったのに、飛距離はそれほど伸びていないと気づいたのは、それから何年もあとのことです。



身体が大きくなって、ホームラン数が減る野球選手

 身体の仕組みを少し考えてみましょう。片腕の重さは、一般的に言えるのは体重の6、7%ぐらいで、体重70Kgの人ならば腕1本の重さは4,5Kgぐらいです。野球の硬式バットの重さが900gか、もう少し重いぐらいですが、腕に比べたら硬式用バットはかなり軽いものです。

 腕は、日常生活で色んな方向に動かします。物を高いところに載せるときは、両腕を頭上高く上げます。腕を動かすということは、その動作に必要な肩や背中の周りの筋肉が動きますので、日常生活の中でかなり「鍛えられて」いると言えるでしょう。

 野球やゴルフでボールを打つという動作は、より多くの「力」をボールに加えるためには、下半身の体重移動とそれに伴う腰の回転、そしてその力を腕からクラブに伝えるわけですが、アマチュアなどであまり飛距離のでない人は、最初に上半身や腕が動きます。もし、今までいい打ち方をしている人が、上半身を鍛え、その部分に力を付けて、スイングの早い段階で腕が動くようになると、インパクトでのスピードが落ちる結果となります。

 エクササイズのメニューを考える場合は、技術の本質をよく理解した上で行わないと、身体を鍛えて距離が落ちる、目指したことと反対の結果に陥ることがありますので、十分注意していただきたいです。


どうやって技術を身につけたか

技術は1つ1つ積み上げるものか?

技術を身につけた過程を、ゆっくりと振り返ってみたら、多くの発見があると思います。最初に教わることは、グリップにボールの位置ぐらいではないでしょうか。テークバックでは、左手をしっかり伸ばして、と教わった人は、不自然に左腕が真っ直ぐになったスイングをする人がいます。そしてその人に左腕のことを聞くと、「左腕は伸ばすんでしょう」という人が殆どです。ここで大事なことは、「不自然」ということです。

多くの人は、打ち方を考えるのではなく、ボールが遠くに飛んでいくのが面白くて、夢中になってボールを打ち続けるのではないでしょうか。そうやって打ち方であるスイングの基本的なものが、自然と身についたと言える、と私は考えます。

「両膝の高さを変えないで」、「オンプレーン上を挙げて、オンプレーン上に降ろす」、「両腕で出来る三角形を崩さないで」などと考えてボールを打っている人、特にゴルフを始めてあまり間のない人は、ひどいミスをすることがあります。2、30センチ手前を打つとか、ボールのトップを打つのだけれど、空振り寸前のトップになったりします。以前は、何故その様なひどいミスショットが出るのか分かりませんでしたが、「打つこと」ではないことを考えてショットすると、とんでもないミスが出ることが分かってきました。

技術は感覚で覚えるもの

自分はパットとアプローチでイップスになったことがありますが、パットの方はかなり長い間苦しみましたが、アプローチはそれほど長い時間を苦しむことはありませんでした。パッティングのイップスの時は、「ヘッドが真っ直ぐ出ているのか」「打つときに下半身が動いているのではないか」「テークバックの仕方はおかしくないだろうか」のようなことを、一杯頭の中で考えてストロークしていたように記憶しています。当然、フェースの芯には当たらないし、パターでも時々ダフッたりしていました。

何がキッカケでイップスを克服したかは、今ではハッキリと覚えてませんが、色んなスポーツの動きに目を向けるようになったことは覚えています。速いボールを投げるためにはどうしたらよいのかとか、一見ゴルフに関係ないようなことに思いますが、運動の仕組みや、日常の作業の仕組みを少しずつ理解するとこが、結果的には「打つ」「投げる」などの「技術」を理解することにつながります。

学生時代、パッティングが上手かった頃には、どんな練習をしていたかを思い出し、それをしてみることにしました。やったことは、下宿の部屋の畳の上で、パターのヘッドがきれいな円を描くように何度も素振りをしていました。何故それをしたかと言えば、パッティングを練習する場所がないので、それをするしか仕方がなかったのです。深く考えずに、スムースにヘッドが動くことだけ、それだけだったと思います。今振り返ると、その時の練習はいいものだったと思います。