[前に飛ぶ限り、ミスでは無い」 杉原輝男プロの言葉

ミスなのか、当然の結果なのか

私自身のことですが、最近ラウンドしていて、よくミスショットを打ちます。打ち方がよくないのは分かっているつもりですが、なんでこんなひどいショットを打つのか、ラウンド中もラウンド後も反省しきりですが、冷静に考えればミスでは無いのです。今の打ち方からすれば、出るべくして出たショットなのですが、自分はもっといいショットを打つゴルファーだと思いたいのでしょう。

他人のプレーをみていたら、厳しい言い方ですが、ミスショットをして当然と思うことがあります。ショートアプローチでのヘッドアップや、凄く力の入ったドライバーショットなど、打った本人はミスショットのあと嘆いていますが、やはり当然に見えます。多くのゴルファーは、よい結果を期待してボールに向かうわけですから、嘆きたい気持ちは理解できます。

杉原輝男さんが言いたいことは、ゴルフはナイスショットをつないでいく競技ではなく、ミスショットをつないでいく競技だよ、と言っているように私は想像します。風が吹いて、地形も平ではないコースで、ナイスショットを打つことは難しく、前にボールが飛んでれば、ホールに近づくわけだから、決してミスとは言えない、それほど思った通りにボールを打つことは難しいものだということでしょう。

ミスと思うか、ミスと思わないのか

練習場で時々出るナイスショットが、自分の本来のショットと多くの人が思っているのではないかと思います。又練習場のゴムマットで打つ場合、多少ボールの手前からクラブが入っても、多くの人がナイスショットと感じているので、コースで難しいライにボールがあれば、そこでミスが出る可能性は極めて高くなります。

多くのアマチュアは、ナイスショットを打とうと練習しているのに対し、恐らく杉原さんは、練習でミスが出たときに、何故そのようなショットが出たのか、その原因を徹底的に追求して練習を重ねてきたと思います。その厳しい姿勢で練習を重ねても、やはりミスは出る、ミスを打たないようにすることは、大変なことだと痛いほど実感しているから、「前に飛べば、ミスでは無い」という気持ちになったのかもしれません。

よいショットを打とうとして、そして打った結果が悪くて落胆するよりも、ミスでは無いのだから、次のショットに全力を注ごうという気持ちになる方が、よいゴルフができるように思います。この言葉の深さを感じます。



道具は、どれぐらい助けてくれるか?

何故「打ちやすいクラブ」に替えるのか

写真は私が使っているクラブで、一番左のサンドウエッジは4、5年前から使っていますが、今のようなソールになったのは1930年代で、ジーン・サラゼンというプロが発明したのです。ソールの広いサンドウエッジのおかげで、バンカーショットはやさしくなったと思います。より打ちやすい道具になって、多くの人のスコアアップに貢献していることは間違いありません。

最近はユーティリティを多くの人が使うようになりましたが、写真の2番アイアンからユーティリティに替える理由は、「ミスしても距離のロスがそれ程多くない」というのが一番多くないでしょうか。「打ちやすい」というよりも、「ミスしたときのダメージが少ない」ということで替えているように思いますが、ここで考えてみることは、道具を替えてもミスの出やすいスイングは変わってないと言うことです。

ヘッドスピードが落ちてくれば、ロングアイアンを打っても距離はでないでしょう。ただ、芯に当たる割合が少なくなった(つまりミスショットが多くなった)からユーティリティに替える、これは自分のゴルフをよくする、すなわちスコアアップにつながるとは言えないと思います。ここを少し深く考えたいと思います。打ち方の改善を放置したままなのに、「打ちやすい」クラブに替えたので自分のゴルフがよくなると信じるのは、その気持ちは分かるのですが、現実にスコアアップにつながらないのではないでしょうか。

スイングはゆっくり変わる

アイアンが打てなくなってきて、ソールの広いアイアンやユーティリティに替える人に多く見られるのは、俗に言う「すくい打ち」になっている人が多いようです。クラブを替えて打ちやすくなったと感じるのは、ひょっとしたらクラブを替えた当初だけかもしれません。「すくい打ち」は変わってないのですが、ユーティリティなどに替えたことによって、その「すくい打ち」の度合いが、ゆっくりではあるがひどくなっていく傾向が多くあるようです。

ミドルアイアンを替えた人が、しばらくするとショートアイアンから、最終的にはウエッジまで打てなくなる人がいます。その人のスイングをみると、ボールを上げようとして、空に向かってクラブを振っています。全てのショットを、ティーアップしないと打てないだろうと思うような打ち方になっています。クラブを替えたことによって、徐々にスイングが変わったのですが、本人は気づかないのが殆どです。

「アイアンが打てなくなって」と相談に来るお客様に、このクラブがいいですよ、と奨めることは私にとってかなり難しい場合があります。だんだんとスイングが変わっていくことが予想できる場合、今と同じか、もう少しよい打ち方になるようなアドバイスをしてあげたいと思いますが、打ち方をよくすることは、本当に簡単ではないので、躊躇してしまうことがたびたびあります。クラブを奨めるのは、時にはとても難しいものと感じます。


「ボールを打つ」という意識の必要性

名手のとんでもないミスショット

昨年のマスターズトーナメントのことですが、最終日首位を行くジョーダン・スピース選手が、アウトを終えた時点で確か5ストロークのリードをしていました。客観的にみて、彼の優勝だと思った人は少なくないと思います。ところが、10番、11番と連続ボギ-、そして12番のショートホールで、ティーショットを池に入れたあと、ドロップエリアでのスピース選手の仕草をみていて、相当動揺しているなと感じました。

グリップをタオルでせわしなく拭く仕草や、キャディーと話すときの険しい顔など、よく見るスピース選手の動作ではないと、明らかに見て取れました。それは、マスターズトーナメントという大舞台で、それも30、40分ぐらい前までトーナメントを大きくリードしていたのですから、現在の状況に考えたら、やむを得ぬ事でしょう。

ドロップエリアから打ったウエッジのショットは、アマチュアがやるような「ダフリ」で、池の一番手前に「やっと入った」というようなものでした。スピース選手は、トッププロの中でもウエッジの上手い選手です。その選手が、大事な試合の最中に、アマチュアが打つような凡ミスをする、テレビを見ていて信じられない思いでした。

単純に「打つ」がいかに大事か

ドロップエリアでのスピース選手の気持ちを推察すると、少し前まで2位を大きくリードしていたのが、今はそれがない、下手をするとトップではないかもしれない、後悔や焦りなどの気持ちが、心を占めていたのでしょう。そのような精神状態でショットをすると、名手でもとんでもないミスショットを打つ、私にとっては凄く参考になる出来事でした。

自分の痛い経験からも、よいゴルフをしていたにもかかわらず、一つのミスショットから、その後のショットが全く駄目になった、そういうのを何度も経験しました。自分としては、さっきまでと同じようにボールを打っているつもりでも、全く当たらなくなってしまう、その原因がよく分からなかったのですが、今はかなりハッキリしています。

ショットをするに際して、「今までよいゴルフをしていたのに」「あのミスショットがなかったら」などという気持ちが心を占めて、目の前にあるボールを打つという気持ちがなくっていたのです。

多くの方に経験があると思うのですが、何にも考えずに単純にボールを打つ、調子のよいときはそうしてショットしている人が殆どではないでしょうか。単純で、凄く当たり前のようなことですが、ボールを打つことだけを考えていることは、ボールを打つことに凄く集中している状態と言えます。皆さんは、どのように思われますか?